先日、静岡県信用保証協会が主催する創業セミナーが静岡市で開催されました。開催の情報を知ったのが、開催日の前日夜、慌ててメールを送り、急遽参加してきました。
というのも、今回のセミナー講師が、創業手帳(株)の代表、大久保幸世氏だということを知ったからでした。
「創業手帳」という名前は耳にされたことがあるでしょうか?
「創業手帳」は、毎月創業される約1万社の全社に(毎月1万の会社が新たに生まれているという事実も驚きですが…)、起業情報誌として無料で送付されます。「会社の母子手帳」というコンセプト、そして起業に関するサポートの全てを無料で行うことを可能とする仕組み、そのユニークなビジネスモデルはどこから来て、どのように構築されたのか、そのアイデアの源流を探れれば…と期待しての参加でした。
まず会場に着いて驚いたのが、会場内にいた人数の多さでした。
それほど大きくない部屋に30~35人ほどいたでしょうか。
しかし、そのうちセミナー受講者は10~12人、残りは信用保証協会をはじめ各金融機関の関係者でした。
政府は、平成25年6月に閣議決定された「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」に基づき、現状4%台の日本の起業率を(アメリカ・イギリスレベルの)10%台に押し上げることを目指し、若者や女性への起業・創業支援を中心に、様々な取組を強力に推進しています。
今回の会場にいた人数の構成も、この流れが顕著に感じられる場面だったのではないかと思います。
つまり、金融機関はじめ各業者は、昨今の官民共に推し進める起業支援を、大きな「ビジネスチャンス」と捉えている、ということです。
書店にはよく、女性誌が、本体価格よりも明らかに豪華な付録をつけても1,000円~2,000円という安い価格で並べられています。
この低価格が成立するのは、読者を顧客とする業者から出版社が受け取る広告収入があるからです。
「創業手帳」も、このような女性誌と同じ仕組みをとっています。
起業家を顧客と捉える会社が、その紙面に自社の商品を紹介するために発行会社へ広告料を支払い、これにより、全社無料配布が可能となっているのです。
雑誌のビジネスモデルとしては既存の形ですが、これを起業家向け情報誌で実現するという発想が生まれた原点を、大久保氏からお聞きすることができました。
創業支援の原点は、前職のGMOメイクショップという会社での経験が元になっているとのこと。大久保氏はこの会社で、中小企業にEコマースのシステムを提供するという仕事をされていたそうです。当社の製品は非常によくできたシステムであったため、新規客は順調に増加したのですが、新規契約と同じくらいの数で解約があり、その解約の最も大きな理由が、「廃業」だったというのです。結果として、契約数が伸びなかった。創業社が短期間で廃業してしまう原因には、創業間もない会社に共通の問題点があり、その最初の段階で解決することにより、生き残る割合を増加させることができる。大久保氏は、自社の売上を上げるために、まず、その顧客の体制を整える支援をし、そのことにより必然的に契約数の減少を防ぐことができた、と言います。
(このお話を詳しく知りたいという方は、こちらのインタビュー記事へ)
創業スタートの支援を受けて生存率が上がることにより、顧客の満足度はもちろん上がり、かつ、自社の売上が伸びる…まさにwin-winの結果につながっています。この視点は、私自身の本業のヒントになる、大変興味深いお話でした。
起業を目指す皆さんは、さまざまな情報を収集し、自身にとって必要なものを活用されることと思います。
ただ、起業家は、あれもこれもと、やらなければならないことが山積みです。
そんなときに、一定の情報がまとまって掲載されている情報誌は非常に便利です。先述の通り、情報誌には広告の側面も大いにあるため、自分に有用な情報か否かの取捨選択は必要ですが、各分野を検討する基準として押さえておくのも、一つの方法ではないかな、と思います。
ご興味、ご関心のある方は、創業手帳HPへ